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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年10月27日
こんにちは、平島です。
段々と寒くなってきており、半袖派の私もようやく長袖を着るようになってきました。
寒くなってきたので、朝のランニングはとても快適になってきました。
暑い夏は朝5時でも湿気もあり、暑いのでランニングのパフォーマンスが落ちてしまいます。
最近、診察していると
「どうも胃がスッキリしない…」
「脂っこいものを食べるとすぐにもたれる…」
という症状の方が多いです。
こうした「胃もたれ」の症状、多くの方が経験されているのではないでしょうか。
一般的には、
胃酸の出すぎ
や
胃の動き(蠕動運動)の低下
などが原因と考えられがちです。
しかし、
私たち消化器内科医が日々多くの患者さんのお腹の中を内視鏡で見ていると、
その不調の根本原因は、実は胃ではなく、もっと下流の「腸」にある
ケースもあることを痛感しています。
特に、
私たちが警鐘を鳴らしている
「腸漏れ(リーキーガット)」
という状態が、巡り巡って胃の不調を引き起こしている可能性が高いのです。
今回は、
この意外な関係性と、その対策の鍵となる
「ビタミンD1日 4000IU」
と
「乳酸菌 1日1兆個」
の重要性について、深く掘り下げて解説します。

まず、
「腸漏れ」
とは何か、簡単におさらいしましょう。
健康な腸の壁は、細胞同士が
「タイトジャンクション」
という”かんぬき”で固く結合され、
体に必要な栄養素だけを選んで吸収し、不要な細菌や毒素、未消化物などはブロックする鉄壁のバリアを築いています 。
しかし、
食生活の乱れ(特に糖質の摂りすぎや悪い油)、ストレス、タンパク質不足
などが原因で腸内環境が悪化すると、この”かんぬき”が緩み、腸壁に無数の隙間ができてしまいます 。
これが「腸漏れ」です。
では、なぜ腸の壁にできた隙間が、遠く離れた胃の不調につながるのでしょうか?
1,全身への「炎症」の飛び火:
腸漏れによって血中に侵入した細菌の毒素(LPSなど)や未消化物
は、体中で静かな炎症を引き起こします。
この慢性炎症は、
自律神経のバランスを乱し
胃の正常な蠕動運動や胃酸分泌のリズムを狂わせ
胃もたれや消化不良を招きます 。
2,腸内ガスによる「物理的な圧迫」:
腸内環境が悪化し、悪玉菌が増えると、腸内で異常なガス発酵が起こりやすくなります。
パンパンに張った腸は、上にある胃を物理的に圧迫し、
胃の内容物が食道へ逆流しやすくなったり(逆流性食道炎の一因)、胃の動き自体を悪くしたりします 。
3,消化・吸収能力の低下による「負のスパイラル」:
腸漏れの状態では、タンパク質をはじめとする栄養素の吸収効率が低下します 。
胃や腸の粘膜もタンパク質から作られており、
その修復(ターンオーバー)には十分なタンパク質
が必要です 。
腸漏れでタンパク質吸収が悪化すると、胃腸の粘膜修復が滞り、さらに消化機能が低下するという悪循環に陥るのです。
この負のスパイラルを断ち切る鍵の一つが、ビタミンDです。
ビタミンDは、単なる骨のビタミンではなく、全身の細胞核に存在する受容体(VDR)に結合し、遺伝子レベルで様々な機能を調整する
「ステロイドホルモン」
です 。
特に注目すべきは、
腸の細胞にもこの受容体(VDR)が豊富に存在し、ビタミンDが結合することで、
腸壁の細胞同士を結合する”かんぬき”(タイトジャンクション)を強化するタンパク質の合成を促進する
ことです 。
まさに、腸の壁を物理的に修復し、”漏れ”を防ぐためのセメントのような役割を果たしてくれるのです。
さらに、ビタミンDは免疫細胞にも働きかけ、過剰な炎症反応を抑える
「免疫調整作用」
を持っています 。腸粘膜の炎症を鎮めることで、腸漏れの根本原因にもアプローチします。
【重要ポイント】
これらの効果を十分に得るためには、骨粗鬆症治療で用いられる量(目安量:1日340IU)では全く足りません 。
がん予防のエビデンスなど、
全身への効果が期待できる
「貯蔵型ビタミンD(25(OH)D)」の血中濃度(50ng/mL以上)
を達成・維持するためには、
1日4000IU(100μg)
の摂取が推奨されます 。
保険処方の活性型ビタミンDでは、この貯蔵型の濃度は上がらないこと
も覚えておきましょう。
もう一つの鍵が、
乳酸菌
です。
ビタミンDが腸の”壁”を外から補強する役割なら、乳酸菌は腸の”中身”、つまり腸内環境を整えるスペシャリストです。
1,圧倒的な「数」による腸内フローラの改善:
私たちの腸内には
約39兆個の細菌
がいます 。
この膨大な生態系に影響を与えるには、ヨーグルトに含まれる数十億個レベルでは少なすぎます 。
1日1兆個という圧倒的な数の乳酸菌(死菌でも効果あり)
を投入することで、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌が優勢な環境を作り出すことが期待できます 。
2,「短鎖脂肪酸」の産生促進:
善玉菌は、食物繊維やオリゴ糖、そして摂取した乳酸菌(死菌含む)をエサにして
「短鎖脂肪酸」
を作り出します 。
この短鎖脂肪酸は、
腸の粘膜細胞の主要なエネルギー源となり、腸のバリア機能を強化します。
また、全身の炎症を抑える効果も報告されています。
3,腸管免疫(GALT)の活性化:
乳酸菌やその菌体成分は、
小腸のパイエル板を刺激し、腸の免疫システムを”トレーニング”
します 。
これにより、腸の防御力が高まり、炎症が起こりにくい状態を維持します。
これらの作用により、腸内ガスの発生が抑制され、胃への物理的な圧迫が軽減されることも、胃もたれ改善に繋がる重要なメカニズムです。
しつこい胃もたれは、単なる胃の問題ではなく、
「腸漏れ」
という、より深刻な腸の不調が隠れているサインかもしれません。 その根本改善のためには、
1,ビタミンD(4000IU/日)で腸の壁を修復・強化する。
2,乳酸菌(1兆個/日)で腸内環境を整え、内側からバリア機能を高める。
この「最強タッグ」によるアプローチが、非常に有効です。
もちろん、
タンパク質をしっかり摂ること、糖質や悪い油を控えること
といった基本的な食事改善も欠かせません 。
ご自身の胃腸の不調の原因がどこにあるのか、詳しく知りたい方は、ぜひ一度、私たち消化器専門医にご相談ください。
胃大腸内視鏡検査や詳細な血液栄養解析、腸内フローラ検査
を通じて、あなたの体の中から健康を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
では、今週も頑張っていきましょう!
この記事を書いた人
平島 徹朗
医師
国立佐賀大学医学部 卒業。 大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、 多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。