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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年12月01日
こんにちは、平島です。
いよいよ11月も終わり、12月に入ってきましたね。
私は、忙しくてせわしない感じがする12月が大好きです!
今年は、年末までに
ランとスイム
を
追い込むと決めているので、追い込みの12月は仕事と共に頑張っていこうと思います。
最近、診察室で身体が衰えてきたという話を患者さんからよく聞きます。
「最近、足腰が弱ってきた気がする」
「つまづきやすくなった」
「ペットボトルの蓋が開けにくくなった」
こんな症状を感じて、「もう歳だから仕方ない」と諦めていませんか?
それは単なる老化ではなく、
「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」
という病気のサインかもしれません。
実は、
このサルコペニアの背後には、私たちが警鐘を鳴らし続けている
「腸の不調」
が深く関わっていることが、最新の研究で明らかになってきました。
今日は、
筋肉と腸の意外な関係、そしてその鍵を握る
「タンパク質」と「腸漏れ(リーキーガット)」
について、解説します。

筋肉が減る原因は、単に運動不足だけではありません。
最も根本的な原因は、
筋肉を作るための「材料(タンパク質)」が足りていないこと
そして
その材料を体内に取り込むための「吸収システム(腸)」が壊れていること
にあります。
私たちの体は、
水分を除くとその約半分がタンパク質でできています 。
筋肉はもちろん、皮膚、髪、血液、ホルモンに至るまで、すべてタンパク質が材料です。
しかし、
現代人の多くは、食事からのタンパク質摂取量が圧倒的に不足しています。
特に高齢になると、
「肉は胃にもたれる」
と敬遠しがちですが、これこそがサルコペニアへの入り口です。材料がなければ、いくら運動しても筋肉は作られません。
ここが消化器内科医として最も強調したいポイントです。
たとえお肉や魚を食べていても、それを受け取る「腸」がボロボロでは意味がありません。
腸の粘膜細胞同士の結合(タイトジャンクション)が緩み、バリア機能が壊れてしまう状態を
「腸漏れ(リーキーガット)」
と呼びます 。
腸漏れが起こると、せっかく食べたタンパク質(アミノ酸)が効率よく吸収されず、そのまま排出されてしまいます。
つまり、
「穴の空いたバケツで水を汲んでいる」
ような状態です。
さらに、
腸漏れによって体内に侵入した有害物質(LPSなど)は、全身で慢性的な炎症を引き起こします。
この炎症は、筋肉の合成を邪魔し、逆に筋肉の分解を促進してしまうという、恐ろしい副作用を持っています。
つまり、
「腸漏れ」こそが、サルコペニアを加速させる隠れた黒幕
なのです 。
では、どうすればこの負のスパイラルを断ち切れるのでしょうか。
答えはシンプルです。
「腸を治しながら、タンパク質を摂る」
ことです。
1. まずは「腸の壁」を修復する
腸漏れを塞ぐためには、以下の3つのアプローチが必須です。
★ビタミンD(1日4000IU): 腸の細胞同士を結びつける「タイトジャンクション」を強化し、壁を物理的に修復します 。
★乳酸菌(1日1兆個): 小腸の免疫スイッチ(パイエル板)を押し、腸の防御力を高めます 。
★悪い油(オメガ6)を控え、良い油(オメガ3)を摂る: 腸の炎症を鎮火させます。
腸のケアと並行して、筋肉の材料を送り込みます。
★1食20g以上を目標に: 筋肉のスイッチを入れるには、一度の食事で約20g以上のタンパク質が必要です 。
★朝食が勝負: 寝ている間に体内のタンパク質は枯渇しています。朝食に卵や納豆、プロテインなどをプラスして、朝一番に材料を補給しましょう 。
★動物性と植物性を1:1で: 肉や魚(動物性)は筋肉の合成効率が高く、大豆(植物性)は腸内細菌のエサになります。両方をバランスよく摂るのが正解です 。
サルコペニアは、単なる足腰の衰えではありません。
筋肉が減ると、
代謝が落ち、免疫力が低下し、将来的な寝たきりのリスクが激増します。
「筋肉をつけなきゃ」
とジムに通うのも良いですが、その前にまず、ご自身の「腸」に目を向けてみてください。
腸漏れを治し、栄養をしっかり吸収できる体を作ること。
それが、筋肉を維持し、健康寿命を延ばすための、最も確実で近道となるアプローチなのです。
当院では、
腸内環境の検査(腸内フローラ検査)
や
採血による栄養解析(オードモレキュラー栄養解析)
も行っております。
「もしかして腸漏れかも?」「タンパク質は足りている?」
と気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
では、今週も頑張っていきましょう!
この記事を書いた人
平島 徹朗
医師
国立佐賀大学医学部 卒業。 大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、 多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。