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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年09月28日
こんにちは。副院長の東です。
朝、歩いていてもうっすらとしか汗をかかなくなりました。
日中もうだるような暑さはほとんどないですね。
来週からは10月、秋を楽しみましょう。
世界における胃がんについて
米国では2025年に胃がんの新規症例が約3万300件発生し、約1万780人が胃がんにより死亡すると予想されています。
グローバルがん統計(GLOBOCAN)2022における185国の将来の胃癌症例数に関する研究が行われました。
世界における胃がん症例の3/4(76%)はヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因であることが明らかになりました。
この集団全体で将来的に1560万人が胃がんを発症することが推定されました。
症例の68%(約1060万人)はアジアに集中しており、とくに中国とインドでの症例数が多く、全体の42%(約650万人)を占めていました。
アジアに次いで多かったのは、南北アメリカ(13%)とアフリカ(11%)でした。
ピロリ菌を原因とする症例は全体の76%(約1190万人)であり、そのうちの67%(約800万人)はアジアで生じていました。
新規症例は、これまで罹患率が低かった地域で生じることが予想され、発症数の急増が特に大きかったのはサブサハラ・アフリカ地域でした。
著者はピロリ菌除去の治療は簡単ではあるものの、この細菌に対するワクチンの開発が最善の策との考えを示しています。
現在第3相臨床試験で安全性と有効性が確認されたピロリ菌のワクチンは1種類だけである。
http://mhttps://www.nature.com/articles/s41591-025-03793-6
日本はピロリの感染による除菌療法が2017年2月より保険適応になっています。
それ以前も除菌療法は行われていましたが、
✓ 胃潰瘍
✓ 十二指腸潰瘍
✓ 特発性血小板減少性紫斑病
✓ 早期胃がん
✓ 胃MALTリンパ腫
の疾患にかかった人のみに限られていました。
現在、一般的には成人してからの除菌療法を行いますが、若年者でも十二指腸潰瘍などを発症した場合には除菌を早期に行います。
上記に出てきたワクチンは、菌に感染しないようにする方法です。
除菌療法はピロリ菌に感染した人が行う、菌を排除する治療です。
日本では、公衆衛生環境の改善により若年者のピロリ菌感染率は10%前後と推定されています。
ですので、日本においてピロリ菌のワクチン療法が必要かどうかは議論の余地があると思います。
胃がんの原因の大多数がピロリ菌であり、ピロリ菌除菌療法が均てん化している日本では、将来的に胃がんは確実に減ります。
しかし、ピロリ菌陰性の胃がんが一定数発生していること、
胃酸過多、胃酸逆流が増え、逆流性食道炎に関連するバレット食道がんが増加傾向であることを忘れてはいけません。
やはりリスクに応じて、胃内視鏡検査を定期的(1~2年毎)に受ける必要性はあると考えます。
この記事を書いた人
東 瑞智
医師
北里大学医学部を卒業。北里大学病院消化器内科学講師として、消化器がんの内視鏡診断・治療、抗がん剤治療だけでなく、難治性逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの消化器良性疾患の治療に従事。2020年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。北里大学医学部消化器内科学非常勤講師。