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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年10月05日
こんにちは。副院長の東です。
10月に入り、秋晴れが多く日中は過ごしやすい季節になりました。
やはり、秋は運動するには持って来いですね。
食欲も増進する季節です。食べすぎには気を付けましょう!
GLP-1受容体作動薬と逆流性食道炎
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド−1)ホルモンと同様にその受容体へ作用します。
GLP-1は本来、小腸で分泌されるインクレチンホルモンで、食事が小腸を通過することで膵臓から分泌されます。
インスリン分泌を促進するとともに、胃排出の遅延、胃酸分泌抑制、消化管運動抑制、食欲抑制などの作用が特徴です。
GLP-1受容体作動薬が受容体に結合してGLP-1の様に作用することで膵臓からのインスリン分泌を促し、
分泌されたインスリンによって血糖値を下げる薬です。
この薬、食欲を抑える、血糖値の上昇を抑えるため、本来の目的である糖尿病治療ではなく、
自費診療クリニックでは痩せる薬として治療している医療機関もあります。
糖尿病治療以外で使用する事は危険ですので、注意が必要です。
英国からの糖尿病薬であるGLP-1受容体作動薬の逆流性食道炎に関する研究報告が発表されました。
2013-21年に GLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の投与を開始した2型糖尿病成人患者を対象に、
GLP-1 受容体作動薬による胃食道逆流症(GERD)リスクについて検討されました。
GLP-1 受容体作動薬の新規使用者2万4708例、SGLT-2阻害薬新規使用者8万9096例を解析対象としています。
結果は、追跡期間中央値3.0年で、SGLT-2阻害薬群に対するGLP-1 RA群の逆流性食道炎に対する相対リスクは1.27(95%CI 1.14-1.42)でした。
GLP1受容体作動薬を使用する事で、SGLT-2阻害薬と比べると1.27倍の逆流性食道炎のリスクがあることになります。
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/ANNALS-24-03420
GLP-1受容体作動薬 投与により胃排出遅延(delayed gastric emptying) が起き、食物が長時間胃に滞留するため胃内圧上昇や逆流を誘発しやすくなります。
胃内容排出遅延により胃内圧は上昇し、下部食道括約筋(LES)にかかる圧が増すと逆流が生じます。
そのため食後の胸やけや胃酸逆流を訴える患者が臨床的にも報告されています。
一方で GLP-1 受容体作動薬 は体重減少効果や胃酸分泌抑制作用もあり、通常であれば 逆流性食道炎 を改善し得る要素も含みます。
したがって「逆流の促進」と「体重減少による改善」のバランスのうち、今回の研究では逆流の促進の方が多かったわけです。
逆流性食道炎に罹っているもしくは罹っていた人に対しては、GLP1受容体作動薬を使用後は症状の出現に注意する必要がありますね。
薬剤によっても逆流性食道炎は生じうることを覚えておきましょう。
この記事を書いた人
東 瑞智
医師
北里大学医学部を卒業。北里大学病院消化器内科学講師として、消化器がんの内視鏡診断・治療、抗がん剤治療だけでなく、難治性逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの消化器良性疾患の治療に従事。2020年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。北里大学医学部消化器内科学非常勤講師。