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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年12月03日

たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。
今回は、我々消化器内科医が一番多く処方する「胃薬」についてです。
「胃が痛い」「胸焼けがする」「胃が重たい感じがする」「胃がもたれる」「消化不良」など。
このような症状に対して、薬局や病院ではさまざまな“胃薬”が処方・販売されています。
しかし一概に“胃薬”と言っても、作用や効果はそれぞれ異なります。
ここでは、代表的な胃薬の種類と、どのような症状に使うのか、飲む際に気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。
■ 胃薬にはいくつかのタイプがあります
① 胃酸を抑える薬
胃酸は食べ物を消化する大切な働きをしますが、出すぎると胃の粘膜を刺激して痛みや炎症の原因になります。
胃酸が多いことが原因の胃痛・胃もたれ・胸焼けには、「胃酸を抑える薬」がよく使われます。
代表的な薬:
・PPI(プロトンポンプ阻害薬)
例:オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール
胃酸を強力に抑えることができ、胃潰瘍・逆流性食道炎に使われます。
・H2ブロッカー
例:ファモチジン(ガスター)
PPIほど強力ではありませんが、安全性が高く、軽い症状に使いやすい薬です。
・ボノプラザン
例:タケキャブ
より強力で迅速な胃酸抑制効果を発揮します。
② 胃の粘膜を保護する薬
荒れた粘膜の表面に膜を作って守ったり、修復を助ける働きをする薬です。
胃が「ヒリヒリ痛む」「空腹時にしみる」という場合に向いています。
例:スクラルファート、レバミピド(ムコスタ)など
③ 胃の動きを良くする薬
食べ物を胃から腸へ送り出す力が弱くなっていると「胃が重い」「もたれる」という症状が出ます。
そんな時に使うのが、胃の動きを整える薬です。
例:モサプリド、ドンペリドン など
④ 胃酸を中和する薬(制酸薬)
ドラッグストアでもよく見かけるタイプで胃酸を直接中和して症状を和らげます。
例:水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなど
■ どの薬を使うかは「原因」で決まります
胃痛にはいろいろな原因があります。
例えば:
・ストレス → 胃酸が増える、胃の動きが悪くなる
・暴飲暴食 → 胃に負担がかかる
・胃炎・胃潰瘍 → 粘膜が荒れる
・ピロリ菌感染 → 慢性的な炎症
・逆流性食道炎 → 胃酸が食道へ逆流して胸焼けが起こる
したがって、「痛いからとりあえず同じ胃薬」では十分な治療にならないことがあります。
症状が続く場合は原因を調べ、適切な薬を選ぶことが大切です。
■ 胃薬を飲むときの注意点
症状が長く続くときは必ず受診する
2週間以上続く胃痛、体重減少、吐き気、黒い便などは、胃潰瘍や胃がんの可能性があります。
市販薬をむやみに飲み続けない
胃酸を抑える薬は便利ですが、長期連用には医師の判断が必要です。
市販の痛み止め(ロキソニンなど)は胃を荒らすことがある
胃痛があるときは自己判断での使用に注意が必要です。
@痛み止めによる胃潰瘍

■ 胃薬だけでは治らない場合もあります
特に ピロリ菌 がいる場合、薬で一時的に症状が良くなっても、炎症が続き再発しやすくなります。ピロリ菌がいるかどうかは、呼気(息)、血液、便などで調べられます。
陽性の場合は 除菌治療(内服薬) を行うことで、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんのリスクを下げることができます。
■ まとめ
胃薬は「症状をごまかす薬」ではなく、原因に合わせて正しく使うと胃の状態をしっかり改善できる薬 です。
・痛みが続く→胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどの可能性があります
・胸焼けが何度も起こる→逆流性食道炎や食道がんの可能性があります
・食欲が落ちてきた→胃がんや膵がんなどのがんがある可能性があります
そんなときは、ひとりで抱え込まず、気軽に相談してください。
あなたに合った検査や治療法を、一緒に探していきましょう。
@胃の不調により胃薬で改善せず、胃カメラをしたら「スキルス胃がん」
