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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年12月17日

たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。
今回は便潜血検査についてです。
大腸がん検診として行われている便潜血検査の正しい知識を身につけましょう。
便潜血検査(免疫法)は、便の中の血液(人の血液に含まれるヘモグロビン)を調べる検査です。
大腸の粘膜にがんや大きなポリープがある場合、出血が起こることがあり、便に血が混じります。
便潜血検査はこの「目に見えない血液」を調べることで、大腸がんや前がん病変を早期に発見するヒントを得るための検査です。
定期的に受けることで「大腸がんによる死亡率を下げる効果がある」と考えられています。
この免疫法は、従来の化学的な便潜血検査に比べて検査の性能が改善されており、 感度(がんがある人を陽性とする確率)や特異度(がんがない人を陰性とする確率)が高い ことが複数の研究で示されています。
複数の研究をまとめた結果、便潜血検査(免疫法)は 「大腸がんによる死亡を減らす効果」が期待されています。
これは、早期のがんや見つかりにくい病変を検査で見つけて精密検査につなげることで、治療が早く始められるためです。
また、無作為比較試験で死亡率低下が証明されている従来の便潜血化学法に比べても同等以上の効果が期待できると評価されています。
この検査は自宅で便を採取して提出するだけで済み、 前の食事制限や薬の制限が不要です。負担が比較的少ないため、幅広い年齢層で受けやすく、自治体の大腸がん検診でも広く使われています。
便潜血検査は便利で有用な検査ですが、 完璧な検査ではありません。ここにいくつかの「落とし穴(限界)」があります。
便潜血検査は、すべての大腸がんや前がん病変が常に出血するわけではないため、 出血が少ない、あるいは一時的に血が出ていないケースでは検査で見つからないことがあるという性質があります。
このため、検査結果が「陰性だったから絶対大丈夫」と安心しすぎるのは危険で、症状がある場合や次回検査の時期が来たら必ず受けることが重要です。
いったん受けただけで安心せず、定期的に受診することが大切です。
さらに、偽陰性があると、本来必要だった精密検査(内視鏡検査)が遅れてしまい、がんの発見が遅れるというリスクがあります。
@半年前、便潜血が陰性だった進行大腸がん

これは、便に血が混じっている原因が大腸がんでない場合にも起こります。
痔や炎症、ポリープでも血が出ることがあり、検査では陽性となることがあります。
この場合、本来必要でなかったにもかかわらず精密検査のために大腸内視鏡を受ける必要があり、時間や費用、身体的負担が増える可能性があります。
免疫法の偽陽性率は完全にゼロではありません。
便潜血検査は 1 年に 1 回〜 2 年に 1 回の定期検査が推奨されます。早期発見の可能性を高めるためです。定期的に大腸内視鏡検査を受けている方は、検査担当医に検査間隔の説明を受けましょう。便潜血検査が陽性になった場合は、検査担当医に内視鏡検査が必要かどうかを確認しましょう。
検査が陽性だった場合は、躊躇せずに医療機関で大腸内視鏡検査を受けてください。放置すると早期発見の機会を逃すリスクが高まります。
血便、腹痛、体重減少などの症状があれば、たとえ最近検査を受けて陰性だったとしても 早めに医療機関で相談することが重要です。便潜血検査は症状がない人のスクリーニング検査であり、症状がある場合は別の検査が必要になることがあります。
便潜血検査(免疫法)は 大腸がんによる死亡を減らす可能性のある、大切な検査です。簡単に受けられて、負担が少なく、定期的に利用することで大腸がんの早期発見につながります。
しかし同時に、
という 限界=落とし穴 を理解し、定期的な受診や適切なフォローを続けることが何より大切です。
陽性の時は、必ず精密検査につなげる必要があります。
@便潜血陽性を数年放置したのちに発見された進行大腸がん

この記事を書いた人
久津川 誠
医師
国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。