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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ

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胃がんの種類と内視鏡治療について

2025年12月24日

  • 副院長ブログ

たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。

今回は胃がんについてです。

胃がんは、胃にできる悪性腫瘍で主な原因はヘリコバクターピロリ菌の感染です。

日本ではまだまだ多く発生しています。

診断される数(2021年)は、112,881例(男性76,828例、女性36,053例)

死亡数(2023年) 38,771人(男性25,325人、女性13,446人)となっています。

それでは胃がんにはどんな種類があり、内視鏡治療できるかどうかについて解説します。

@胃がんの種類について

胃がんは大きく 「分化型」 と 「未分化型」 に分類され、それぞれ性質が異なります。

● 分化型胃がん

細胞の形が比較的整っており、胃の表面側に広がることが多いため、内視鏡で見つけやすい傾向があります。

進行のスピードもゆるやかで、早期に発見されれば内視鏡治療の対象になることが多いタイプです。

→分化型胃がんの内視鏡画像。病変の境界がわかりやすい

● 未分化型胃がん

細胞の形が不揃いで、粘膜の下に潜り込むように広がることがあり、内視鏡では境界がはっきりしない場合があります。進行が早めの傾向があるため、胃がんの範囲や治療方法などは分化型胃がんより慎重な評価が必要です。

→未分化型胃がんの内視鏡画像。境界がはっきりせず、内視鏡治療は断念した症例

@胃がんの内視鏡所見

 

早期の胃がんは、わずかな変化として観察されます。

 

● 表面の凹凸やわずかな盛り上がり

分化型では、小さな盛り上がりや平坦な赤み、わずかな陥凹として見えることがあります。

● 色調の変化

がんの部分が赤く見えたり、逆に白っぽく見えることがあります。

● 血管パターンの乱れ

拡大内視鏡や特殊光(NBI など)を使うと、細かな血管の乱れが見やすくなり、診断の助けになります。

未分化型では、色や形の変化が乏しく境界が不明瞭なことがあり、より高度な拡大観察が必要です。

→ 最終的な診断は生検(組織検査)で行います

内視鏡で疑わしい部分から組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べて
胃がんかどうか、胃がんであればどの種類か を確定します。

@内視鏡治療(ESD)について

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、胃の表面のがんを内視鏡で切除する治療方法です。

  • お腹を切らずに治療でき、体への負担が少ない
  • 胃を温存でき、生活の質を保ちやすい

という大きな利点があります。しかし、すべての胃がんがESDできるわけではなく、転移リスクの低い早期がんに限られます。

@ESD の適応(治療できる条件)

● 適応の原則

  • リンパ節転移の可能性が極めて低いこと
  • 腫瘍を一括で完全に切除できる大きさ・部位であること

これが ESD の基本条件です。

● 標準的に ESD が行える病変

<EMR/ESD 適応病変>

2cm 以下・潰瘍なし・分化型・粘膜内がん

<ESD 適応病変>

2cm を超える潰瘍のない分化型・粘膜内がん
3cm 以下で潰瘍のある分化型・粘膜内がん
2cm 以下・潰瘍なし・未分化型・粘膜内がん

ESD は、早期に発見された胃がんに対して、体への負担が少なく根治を目指せる治療法です。
病変の種類・大きさ・深さを総合的に判断して適応を決めます。

*2㎝以下で潰瘍のない分化型胃がん ESDを受けて完治しました

*潰瘍はないが2㎝以上ある未分化型胃がん ESDではなく外科的治療を受けて完治しました(矢印の範囲外にもがんが広がっています)

 

 

まとめ:早期発見と適切な治療ができれば、胃がんで亡くなるリスクは低くなります

胃がんは、早期に発見できれば高い確率で根治が期待できる病気です。

胃がんは、進行すると胃の壁の深い層にまで広がったり、リンパ節へ転移したりする可能性があり、その場合は外科手術が必要となります。

しかし、早期に見つかった場合、がんは粘膜内にとどまっていることが多く、その段階で治療できれば、胃を大きく切除する手術を行わなくても済む可能性があります。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、早期胃がんに対して非常に有効な治療です。内視鏡を使って病変だけを丁寧に剥がし取り、胃を温存できるため、お腹を切る必要がありません。

ESD では胃をそのまま残せるため、術後の食生活や生活の質を維持しやすいという大きな利点があります。

胃の機能を保ちながらがんを治療できるという点は、患者さんにとって非常に価値が高いものです。

これらの理由から、胃がんを早い段階で見つけるために、定期的な胃カメラ検査を受けることは健康管理においてとても大切です。そして、もし早期がんが見つかった場合には、ESD という体に優しい治療法で根治を目指すことができます。

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この記事を書いた人

この記事を書いた人

久津川 誠

医師

国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。

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