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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2025年11月09日
こんにちは。副院長の東です。
11月に入りました。秋が短かったという声をよく聞きます。
確かに朝方に気温が低い寒い日々が続いていますが、冬はもっと寒いはずです。
インフルエンザ感染者も例年よりもかなり早いピークが来ています。
手洗いうがいの感染対策を忘れていませんか?
がんと遺伝子異常

がんと診断される人が確実に増えてきています。
心疾患、脳血管疾患による死亡が減ってきているのとは対照的です。
生活習慣病である高血圧、高脂血症、糖尿病の薬が増え、病勢コントロールが出来ている結果だと思います。
寿命が長くなってきている現代で、がんは死因の第一位になりました。
がんは遺伝子の病気です。
細菌やウイルス感染症、環境因子(食事、喫煙、アルコール)、先天性の遺伝子異常など原因は様々です。
遺伝子は私たちの体の設計図であり、設計図が間違えば当然間違った細胞が出現します。
がん細胞が増殖したその積み重ねがいわゆる「がん」なのです。
正常な細胞は、増殖がコントロールされています。
ダメージを受けた細胞、老化した細胞は細胞死となり、遺伝子により元通りの新しい細胞が発生します。
つまり、右向け右の状態で、秩序を乱す細胞はいません。
がん細胞はなぜ悪いかというと、正常細胞と異なり無秩序に増殖を繰り返すからです。
勝手に増えて、勝手に死んで、勝手にあちこちに飛び回ります。
米国からの研究で、複数のがんを経験する患者の12人に1人は、がんリスク遺伝子に変異があることが明らかになりました。
最初のがんを克服する患者さんが増えてきた結果、さらに別のがんを発症するリスクを高める遺伝性の遺伝子変異を持っている人が多くいることが分かったことに由来します。
数十万人規模の参加者の遺伝情報と健康データを集めた 英国バイオバンクのデータを用いて、
11種類の主要ながんに関して既知のがん素因遺伝子(計96種類)を解析しています。
がん種は、膀胱がん、乳がん、中枢神経がん、大腸がん、肺がん、悪性黒色腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、腎がん、甲状腺がんです。
結果として、
ATM, BARD1, BRCA1, BRCA2, BRIP1, CDKN2A, CHEK2, HOXB13, MITF, MLH1, MSH2, MSH6, NF1, PALB2, RAD51C, RAD51D
の遺伝子異常は1つのがんの出現に関連していました。
複数のがんを経験者の8.36%が、これらの遺伝子のいずれかに稀少病原性変異を持っていました。
リスクとしては2.56倍の上昇でした。
参考までに単一のがんの経験者では6.28%であり、1.87倍のリスク上昇でした。
この結果は遺伝性のがんリスク遺伝子が多いため、家族が潜在的な遺伝リスクを知る手がかりにもなると結論しています。
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2838068?resultClick=1
がんと診断された場合に、上記遺伝子異常を持っていれば将来的に別のがんを発症するリスクが高くなります。
遺伝子パネル検査が個別化医療へとつながり、家族が潜在的な遺伝リスクを知る手がかりにもなりえます。
現時点では、保険診療内での適応は難しいですが、将来的にはがん診断、治療へと結びつく可能性はあります。
将来的には、がん治療はこれまで以上に予防へとシフトすることとなり、大きく変わるかも知れません。
この記事を書いた人
東 瑞智
医師
北里大学医学部を卒業。北里大学病院消化器内科学講師として、消化器がんの内視鏡診断・治療、抗がん剤治療だけでなく、難治性逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの消化器良性疾患の治療に従事。2020年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。北里大学医学部消化器内科学非常勤講師。