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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2026年06月03日

たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。
今回は「ピロリ菌と胃がん予防」についてお話しします。
近年、医療の現場では「ピロリ菌はできるだけ若いうちに見つけて除菌したほうがよい」という考え方が広がっています。
実際に、もし日本人全員が若いうちにピロリ菌検査を受け、
感染している人が適切に除菌できたとしたら、
将来の日本の胃がんは大きく減少すると考えられています。
【ピロリ菌とは何か?】
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の中に住みつく細菌です。
一度感染すると自然に消えることはほとんどなく、
何十年にもわたって胃の粘膜に炎症を起こし続けます。
感染したすべての人が病気になるわけではありませんが、
長期間の感染によって慢性胃炎が進行し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、
さらには胃がんの原因となることが分かっています。
現在では、ピロリ菌は胃がん発症の最大の危険因子の一つと考えられています。
【なぜ若いうちの除菌が大切なのか?】
ピロリ菌による胃がんは、ある日突然発生するわけではありません。
感染
↓
慢性胃炎
↓
萎縮性胃炎
↓
腸上皮化生
↓
胃がん
という長い経過をたどります。
@長期間のピロリ菌感染で荒れてしまった胃@

若い時期には胃の粘膜へのダメージがまだ少ないため、
この段階で除菌できれば胃がんへ向かう流れを早い段階で断ち切ることができます。
一方で、高齢になってから除菌した場合でも効果はありますが、
すでに胃粘膜の変化が進んでいることがあり、
胃がんリスクを完全にゼロにすることはできません。
そのため近年は、「胃がんを早期発見する」だけでなく、
「胃がんそのものを予防する」ことが重視されるようになっています。
【日本の将来はどう変わるのか?】
日本は世界的に見ても胃がんの多い国です。
その原因は、ピロリ菌感染率が高いことです。
しかし近年は衛生環境の改善により若い世代の感染率は大幅に低下しています。
さらに、一部の自治体では中学生や高校生を対象としたピロリ菌検査・除菌事業も行われています。
もし今後、若年層への検査と除菌がさらに普及すれば、
20年後、30年後には胃がん患者数や胃がん死亡者数は大きく減少する可能性があります。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍も減少し、将来的には胃がん検診のあり方そのものが変わるかもしれません。
これは感染症対策によって将来の病気を防ぐという意味で、
HPVワクチンによる子宮頸がん予防やB型肝炎ワクチンによる肝がん予防と同じ方向性の取り組みといえるでしょう。
【除菌すれば安心なの?】
ここで誤解してはいけない点があります。
除菌は非常に有効ですが、万能ではありません。
長期間感染していた人では、除菌後も胃がんが発生する可能性があります。
そのため、萎縮性胃炎がある方や医師から定期的な胃カメラを勧められている方は、
除菌後も継続的な経過観察が重要です。
また、胃の不快感の原因が必ずしもピロリ菌とは限らず、除菌後も症状が残ることがあります。
@除菌後に発見された早期胃がん@

【まとめ】
ピロリ菌は、現在の医学で「見つけることができる」「治療できる」「将来の胃がんリスクを下げることができる」数少ないがん関連因子です。
特に若い世代では、除菌による恩恵がより大きいと考えられています。
「症状がないから大丈夫」と思わず、
一度も検査を受けたことがない方は、健康診断や人間ドック、
あるいはかかりつけ医に相談してみてください。
胃がんは早期発見も大切ですが、
これからの時代は「胃がんにならないための予防」がさらに重要になります。
ピロリ菌対策は、その中心となる取り組みの一つです。
未来の自分のために、そして将来の日本の健康のために、
ピロリ菌について正しく知り、必要な検査と治療を受けることをおすすめします。
この記事を書いた人
久津川 誠
医師
国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。