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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ

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消化器内科医は受けない便潜血検査

2026年05月28日

  • 副院長ブログ

たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。

今回は「消化器内科医は受けない便潜血検査」というお話です。

「便潜血検査」は、世界中で大腸がん検診に用いられている非常に優れたスクリーニング検査です。

便の中に混じる微量の血液を検出し、大腸がんや大腸ポリープの存在を「疑う」ための入り口として行われています。

簡便・安価・非侵襲で何百万人という単位の人々に一斉に実施できます。

公衆衛生という集団という視点で見れば、便潜血検査は大腸がんによる死亡を確実に減らしてきた、有効性の高い検査です。

それでも、私自身が個人として検査を選ぶ場面では、便潜血検査を選びません。

理由は明確で、

「スクリーニングとしては優れているが、これから述べる限界を考慮すると個人の最適解とは限らない」からです。

まず、便潜血検査の強みを整理します。

・非侵襲で手軽に受けられるため、受診率が上がりやすい。

・反復(毎年〜隔年)の実施が前提で、集団全体のリスクを着実に下げられる。

・陽性になれば内視鏡検査につなげる、という二段階アプローチが確立している。

しかし、限界もはっきりあります。

・出血を捉える検査なので、出血の少ない「小さな早期がん」や「平坦・無茎性のポリープ」は見逃されやすい。

・検体の採り方や食事・便の状態に影響され、陰性でも病変が存在する偽陰性が一定数ある。

・「陽性=がん」ではありませんが、陽性で受診するとすでに進行がんだった、というケースは臨床の現場で決して珍しくありません。

・結局、確定診断も治療も便潜血検査では行えず、次のステップとして内視鏡が必要になる。

@便潜血陽性の進行大腸がん

 

@便潜血陰性の進行大腸がん

消化器内科医の立場から見ると、「診断と治療が同時にできる」ことの価値は計り知れません。
大腸内視鏡検査は、直接粘膜を観察し、病変をその場で詳細に評価し、生検で確定診断に進めます。
さらに、多くのポリープはその場で切除できます。
つまり、内視鏡は「見つけて、確かめて、取る」が一度に完結する検査です。
早期がんや前がん病変(大腸ポリープ)を「出血の有無に頼らず」見つけ、病変を先回りして切除できるのが特徴です。

@内視鏡治療することで大腸がん予防となる大腸ポリープ

 

もちろん、内視鏡検査にもデメリットはあります。
前処置(腸管洗浄)が煩わしく、検査中の不快感や痛みの可能性、微小ながら穿孔や出血といった合併症リスク、コストや時間的負担も無視できません。
国や自治体のがん対策では、より多くの人がとにかく一歩目を踏み出せる便潜血検査が基盤になっています。公衆衛生としては「広く・何度も」行われる検査が最適です。

消化器内科医は最初から内視鏡検査を選びます。理由は次の3点に集約されます。

➀見逃しの最小化:出血に依存せず、平坦病変や小型病変も直接見つけられる。観察技術や拡大・色素・画像強調内視鏡により微細な所見を観察できる

②その場で治療:見つけたポリープを同日に切除し、将来のがん化リスクを実際に下げられる。

③心理的メリット:陰性(異常なし)であれば、少なくとも当時点で「粘膜を見て確認した」という安心感が明確に得られる。

臨床の実感としても、2,3年便潜血陰性であった人が陽性となり、その後内視鏡検査で進行がんで見つかったことがあります。
がんは均一に出血するわけではありませんし、病変形態や部位によっては出血が断続的です。
年に1回のタイミングでその偶然に賭けるより、
直接見に行く内視鏡のほうが、消化器内科医にとっては合理的です。

では、全員が最初から内視鏡検査を受けるべきでしょうか。
現実には、医療資源や費用、受診のハードルを考えると、万人に一律で推奨するのは現実的ではありません。
だからこそ、集団全体の死亡率を下げる「便潜血→陽性なら内視鏡」という流れは、社会にとって理にかなっています。
そのうえで、以下のいずれかに当てはまる方は、最初から内視鏡を前向きに検討してよいと考えます。

・家族に大腸がんや多発ポリープの既往がある。

・40歳以上、あるいは30代でも腹部症状・体重減少・貧血など気になる所見がある。

・過去にポリープ切除歴があり、経過観察としての内視鏡が推奨されている。

まとめると、便潜血検査は「多くの人を大腸がんから救う有効な検査」です。
社会全体のがん死亡を減らすうえで、これほど効果的で現実的な方法はそう多くありません。

一方、個人として最短距離で「見逃さず、診断し、その場で治療する」ことを目指すなら、私は内視鏡検査を選びます。検診は目的と状況で最適解が変わります。
ご自身の年齢、家族歴、体調、受けやすさ、安心感のバランスを考え、「まず何を優先するか」を決めてください。
便潜血でも、内視鏡でも、今日の一歩が将来の安心につながります。
あなたに合った方法で、先延ばしにせず、計画を立てていきましょう。

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この記事を書いた人

この記事を書いた人

久津川 誠

医師

国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。

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