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ヘリコバクター・ピロリ菌ってなんですか?

  • 胃内視鏡検査

健診や一般診療でも胃内視鏡検査(胃カメラ)検査や胃がんABCリスク検診が普及し、胃がんや胃十二指腸潰瘍の主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌であることが多くの方に知られてきています。

また、市販のヨーグルトやサプリにもヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑えることを謳っている商品も出ています。

胃がんの原因の多くを占めるピロリ菌ですが、何となく知っていても詳しいことまでは案外と知らない方が多くいると思います。

ヘリコバクター・ピロリ菌に関する知識、検査法、除菌治療についてわかりやすく説明していきたいと思います。

  • ヘリコバクター・ピロリ菌ってなんですか?
  • ヘリコバクター・ピロリ菌はどうやって感染するのですか?
  • ヘリコバクター・ピロリ菌の感染でなにが起こるの?
  • ヘリコバクター・ピロリ菌の検査方法は?
  • 胃がんABCリスク検診ってなんですか?
  • ヘリコバクター・ピロリ菌の治療はできるのですか?
  • 注意して頂きたい点

1. ヘリコバクター・ピロリ菌ってなんですか?

ヘリコバクター・ピロリ菌は1983年 にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されました。約3×0.5μmの大きさのらせん状をした細菌で、図のように4~8本のしっぽがあります。このしっぽをヘリコプターのように回転させて移動し、胃の前庭部(pylorus)に生息することから、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。胃の中は強い酸性のため、通常の菌は生息できません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を作る力があり、尿素を分解してアンモニアを生成することができます。このアンモニア(アルカリ性)で胃酸の酸性を弱めることで菌体自身を守っているのです。

2. ヘリコバクター・ピロリ菌はどうやって感染するのですか?

日本では年齢とともにピロリ菌を持っている人が増えていき、40歳以上では約70%の感染率で、全国民の約半数が感染しているとされています。現在は、およそ自分の年齢くらいの感染率(50歳であればだいた50%)と覚えていただけたらと思います。高年齢であれば感染率が高く、若年齢であれば低いのが特徴です。その感染理由としては、ピロリ菌を含んでいた井戸水などの水人から人への経口感染(口から口)からの感染がほとんどで、家族内での父母や祖父母から子供への感染(食べ物の口移しなど、一度口へ入れた食べ物を子供に与えること)、幼稚園や保育園などで口に入れたおもちゃを共有することなどで多くが5歳までの幼少時に感染します。免疫力がついた成人になってからの感染はほとんどないと言われています。

3. ヘリコバクター・ピロリ菌の感染でなにが起こるの?

ピロリ菌が胃に感染するとピロリ菌から胃の粘膜に病原性タンパク質CagA(キャグA)が注入され、慢性活動性胃炎と呼ばれる持続的な炎症を引き起こし、次第に胃粘膜が萎縮(胃粘膜が薄くなる現象)していきます。胃粘膜の萎縮とは言い換えると「胃の老化現象」のことで、胃酸の分泌が減少していき、消化不良や胃の不快感などの症状が出現してきます。
一度ピロリ菌に感染すると、年齢とともに胃粘膜の萎縮(胃の老化)が次第に進んでいき、強い胃粘膜の炎症が持続して、胃がんの発生リスク(ピロリ菌未感染者の約10倍以上)がより高くなることが判明しています。

ピロリ菌の感染者は、全くピロリ菌に感染したことがない人に比べて胃がんのリスクは10倍以上であることが報告されています。ピロリ菌に感染しているからといって、必ず胃がんになるとは限りませんが、胃がんを発症する人の99%がピロリ菌感染者だというデータがありますので、注意が必要です

萎縮性胃炎の胃カメラ写真です。萎縮すると厚かった胃の粘膜が薄くなり、赤く長い血管の模様が透けて見えることが確認できます。

実際に胃カメラ検査(内視鏡)胃の観察を行うことで、胃粘膜に萎縮があるかないかどうか、萎縮があればその程度、またピロリ菌感染の検査も行うことができます。
萎縮がさらに進行すると、胃粘膜が腸の粘膜に置き換わる「腸上皮化生」という状態になってしまいます。この状態になるとピロリ菌が生息できないほど胃粘膜の荒れた状態となっているので、ピロリ菌が自然消失していることがあります。

4. ヘリコバクター・ピロリ菌の検査方法は?

4-1. 今までピロリ菌を検査したことがない方

胃カメラを行い胃がんないことを確認しないと、ピロリ菌の検査や治療をする意味はありません。まずは胃がんの有無や胃の炎症の程度を胃カメラで確認することが優先です。

4-2.ピロリ菌陽性と言われ他院で除菌をして効果判定(除菌が成功したかどうかの検査)をしていない方

1年以内に胃カメラをしていない場合は一度胃カメラを受けられることをお勧めします。受診時に内服薬の有無などをお聞きしてから効果判定の日程を調整します。

ピロリ菌の検査には内視鏡を使う方法では、胃の中の様子を観察すると同時に内視鏡により採取した胃の組織を用いて、「迅速ウレアーゼ試験」、「鏡検法」、「培養法」の検査をします。

内視鏡を使わない方法には、「抗体測定(血液検査、尿検査)」、「尿素呼気試験」、「便中抗原測定」があります。

これらを単独もしくは組み合わせて検査をしていきます。個人によって最適な検査方法が異なりますので医師にご相談ください。

ピロリ菌の検査は胃カメラの時に同時に行うことができます。内視鏡検査中に行う迅速ウレアーゼ試験や血液検査による血中ヘリコバクター・ピロリ抗体で調べます。尿素呼気試験と言われる息を袋に吹いてピロリ菌の検査を行う検査で追加することもあります。

ピロリ菌検査の保険適用は胃内視鏡検査によって「ピロリ菌感染胃炎(萎縮性胃炎)・胃潰瘍・十二指腸潰瘍」が確認された場合と「早期胃がんの内視鏡治療後・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少症」となっております。胃内視鏡検査を行わずに、ピロリ菌のみの検査を行うことはできませんし、早期胃がんの有無や胃炎の状態を評価せずにピロリ菌検索のみを行うのはナンセンスな行為です。

以前は、ピロリ菌感染胃炎は保険の適応外でしたが、平成25年2月より胃内視鏡検査で確認されたピロリ菌に感染している可能性のある胃炎もピロリ菌検査・除菌治療の保険適応となりました。ピロリ菌を除菌することで、胃がんになるリスクを下げることができますので、積極的なピロリ菌検査・除菌治療が推奨されております。

5. 胃がんABCリスク検診ってなんですか?

自治体や健診で行っている胃がんABCリスク 検診とは、血液検査にてヘリコバクター・ピロリIgG 抗体検査(採血)でピロリ菌感染の有無を、ペプシノゲン(PG)検査(こちらも採血)で胃粘膜萎縮度を調べ、その結果を組み合わせて胃がんのリスクをA,B,C,Dの4群に分類して評価する検診です。この分類法には様々な問題もあり、現在あらゆるところで議論されている最中です。おおよその指針に過ぎませんので、これだけで胃内の状態や胃がんの有無を評価することにも色々な人から疑問の声も挙がっています。検診などで大人数をさばく場合にはある程度有効かもしれませんが、これだけで胃がんの有無は分かりませんので、注意が必要です。下記のような指針となっていますが、当院では胃がんの早期発見のために1年に1回の胃カメラ検査をお勧めしています。A群だからと言って胃がんにならないということでは決してありません。

6. ヘリコバクター・ピロリ菌の治療はできるのですか?

ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性と診断されたら、ピロリ菌を退治する除菌治療を受けることをお勧めします。6ヶ月以内に胃内視鏡検査を受けられていない場合は保険診療での除菌治療を行う場合は、胃内視鏡検査が必要となります。1次除菌治療は2種類の抗生物質と1種類の胃薬を1週間1日2回服用します。服用中の1週間は禁酒になりますので、飲酒の機会がない時期に服用されることをお勧め致します。当院では、1次除菌治療薬内服後の1か月後に尿素呼気試験で除菌が成功したかどうかを判定します。1次除菌を失敗した場合は、保険適応で2次除菌を行うことができます

ピロリ菌の除菌治療は基本的に2回目までが保険適応となります。3回目の除菌治療である3次除菌からは保険適応がなく、自費診療(当院では3次除菌お薬料金2万6千円+除菌判定検査料金約1万円で合計3万6千円(税抜き))となります。3次除菌に関しては、まだ使用するお薬の内容がきちんと決まっていませんので、各医療機関ごとに使用するお薬の種類が違ってきます。そのため、3次除菌の治療を行っていない医療機関も多くあります。当院では、様々な文献などから現在最適と思われるお薬の組み合わせを考慮して、3次除菌を自費診療にて行っております。

除菌療法を始めると、約10%程度の方に軟便・下痢・味覚異常などの副作用がおこる場合があります。また、肝臓の機能をあらわす検査値の変動が見られることや、まれに、かゆみや発疹など、アレルギー反応があらわれる人もいます。

特にかゆみや発疹などがある場合は薬を服用するのをやめて、担当医師にご相談下さい。

最近の研究で、ピロリ菌除菌後にピロリ死菌が胃から腸内に移行した後に血液中に吸収されることで発疹が出現する、ピロリアレルギーがトピックとなっております。抗生剤の副作用との判断が難しい場合があるので医師にご相談ください。

原則としては高齢などの上限の年齢制限はありませんが、除菌治療による胃がんのリスク低下という目的を考えた場合、90歳の方に除菌治療を行って意味があるのかという問題も出てきます。下限の年齢制限ですが、薬事法で定められている除菌治療の効能効果の部分に『通常、成人には。。。。』と明記されており、未成年者に対する除菌治療の記載はなく、未成年者に対する除菌治療を行う場合には未成年の患者さんと保護者の同意が必要と思われます。

年齢のみで適応の有無を判断することはできませんが、80歳以上の方は、胃内の状態や基礎疾患の有無を総合的に担当医が判断して除菌をするか決定していますので、ご相談ください。基礎疾患がなく、本人のご希望がある場合にはご高齢であっても除菌治療を行ってよいと思われます。また、5歳未満の小さなお孫さんなどと接することが多い高齢者では感染源となる可能性もありますので、除菌治療を考慮した方がよいでしょう。

7. 注意して頂きたい点

実際に胃カメラ検査(内視鏡)胃の観察を行うことで、胃粘膜に萎縮があるかないかどうか、萎縮があればその程度、またピロリ菌感染の検査も行うことができます。

萎縮がさらに進行すると、胃粘膜が腸の粘膜に置き換わる「腸上皮化生」という状態になってしまいます。この状態になるとピロリ菌が生息できないほど胃粘膜の荒れた状態となっているので、ピロリ菌が自然消失していることがあります。 このような腸上皮化生の状態となっている場合には、血中のヘリコバクター・ピロリ抗体が陰性となり「ピロリ菌陰性」と判定されることがありますが、実は最も胃がんが発生するリスクが高い状態ですので、判定結果に注意が必要です。

つまり胃がんの早期発見と胃がんのリスクを減らすためには以下の3つが大切になってきます。

  • 胃カメラ検査で胃粘膜の萎縮の有無とその程度、腸上皮化生の有無を確認すること
  • 胃粘膜の萎縮があればピロリ菌の存在診断と除菌治療をすること
  • 定期的に胃カメラを受けていくこと

ピロリ菌除菌前には、胃カメラを必ず行わなければなりません。萎縮性胃炎の評価とその拡がりと、胃カメラを受けた時点での胃がんの有無を詳細に調べておくことが必要です。

胃カメラを行わないでピロリ菌判定だけを行うこと(採血・尿検査でのピロリ抗体検査や尿素呼気試験など)は、「ピロリ菌陰性」と診断された場合にも実は胃がんのリスクが最も高い「腸上皮化生」の状態のこともありますし、ピロリ菌と関係しない胃がんも稀ではありますが存在します。何より「胃がんがあるかもしれない」にも関わらず除菌治療だけ行って満足しているという、とても恐ろしい行為だと思われます。

現代の医療は進歩しており、胃がんは除菌治療によりリスクを低下させることができる時代です。そして、内視鏡技術の向上により早期の段階での胃がんの発見が可能となってきました。ピロリ菌検査と内視鏡検査を上手に活用して、「胃がんを早期発見・早期治療し、胃がんで亡くならない」ように心がけていきましょう。

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