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直腸カルチノイドとは?

  • 大腸内視鏡検査

直腸カルチノイドとは?

直腸カルチノイドは直腸にできる腫瘍で、神経内分泌腫瘍(NET)の一つになります。“カルチ”はがんを意味し、“ノイド“はもどきを意味します。つまりカルチノイドは”がんもどきき“という意味になります。しかし、悪性度は低くても悪性腫瘍として転移を起こす腫瘍も報告され、誤解を防ぐ意味もある近年WHOの分類に基づき神経内分泌腫瘍(NET)の呼び名が正式名称になっています。

カルチノイドという病名は“カルチ”はがんを意味し、“ノイド“はもどきを意味しています。つまりカルチノイドでは “がんもどき”ということになります。他の悪性腫瘍(いわゆる癌)と比べて比較的おとなしい腫瘍という特徴を加味して1907年にドイツのOberndorfer先生が カルチノイド(Carcinoid)命名されました。実際には遠隔転移を来すような症例もあり、誤った認識を与えるため、2000年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)によりカルチノイドから神経内分泌腫瘍 (neuroendocrine tumor:NET)という名称に変更されました。

消化器領域については、カルチノイドからNETという名称に変更され、カルチノイドという呼び方はされなくなりました。これで、消化器領域は臓器を問わず(胃腸や胆膵など)、NETに統一され、カルチノイドという名称は、NETによるホルモン産生症状(皮膚紅潮、下痢など)に対する病態に対してのみ「カルチノイド症候群」として使われるようになりました。

ただし一般の医療現場においては、カルチノイドは依然使用されている病名ですが、現在直腸カルチノイドは直腸NETと定義されていることから、この記事では直腸カルチノイド(直腸NET)と併記しています。

カルチノイドは消化管のなかでは直腸に発生することが最も多く、胃、十二指腸と続きます。

直腸カルチノイド(直腸NET)は、大腸のカルチノイドの大半を占めますが、全大腸癌の1%未満にしかすぎません。

神経内分泌腫瘍とは?

神経内分泌腫瘍 (NET)とは、神経内分泌細胞(ホルモンなどを分泌する細胞)から発生する腫瘍で、膵臓や消化管、肺など全身のさまざまな部位にできます。

神経内分泌細胞はホルモンやペプチドなどを分泌する細胞の総称で、全身に分布しているため、NETも全身の臓器に発生することになります。このうち、消化器領域に発生するものが約60%、肺や気管支など呼吸器領域に発生するものが約30%とされています。消化器領域では、膵臓、直腸に発生するものが最も多いため、内視鏡検査でよく遭遇するのは直腸の病変である直腸カルチノイド(直腸NET)ということになります。

統計データによると、神経内分泌腫瘍(膵・消化管)は一年間に10万人中2.69人程度の新規患者さんが発生しています。がん罹患者数一位の大腸癌が10万人中117.1人であることと比較すると稀な腫瘍であることが分かります。30-60歳という幅広い年齢層に発生し、性別による違いはないと考えられています。

NETは腫瘍細胞が正常な細胞の形態と類似する度合いである分化度により、分化度が高い神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine tumor)と、分化度が低い神経内分泌がん(NEC:Neuroendocrine carcinoma)に分けられます。高分化型のNETは悪性度が低く、低分化型のNECは悪性度が高い腫瘍です。

すこし詳しく説明すると、NETはさらに腫瘍細胞の悪性度によって、増殖能が低く「低~中悪性度」の(NET G1、NET G2、NET G3)と、増殖能が高く「高悪性度」の(NEC:neuroendocrine carcinoma)に分類されます。Carcinomaはがんですので、NECは神経内分泌癌と考えてよいでしょう。この悪性度の違いによって治療方法が大きく異なります。

WHO 分類(2019)

NET:神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍とも)
NEC:神経内分泌癌
MiNEN:混合型神経内分泌・非神経内分泌腫瘍

神経内分泌腫瘍自体は、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)、von Hippel-Lindau病(VHL)と言った稀な遺伝性疾患に合併しやすいことも知られています。

粘膜下腫瘍とは?

粘膜下腫瘍は、腫瘍(病的な細胞が増殖したもの)が粘膜の下に存在していて、正常粘膜に覆われていて、正常粘膜がなだらかに盛り上がっているように見える病変です。

胃にできた粘膜下腫瘍であれば胃粘膜下腫瘍、食道であれば食道粘膜下腫瘍、大腸であれば大腸粘膜下腫瘍言うように、粘膜を持つ臓器であればどこでも粘膜下腫瘍は発生します。

粘膜とは上皮と言われる細胞の集まりで、消化管はすべて上皮があります。粘膜は、粘膜固有層、粘膜筋版、粘膜下層、筋層が主な構造になります。その粘膜の下に腫瘍成分が発生したものの総称を粘膜下腫瘍と言います。

何ができるかというと、筋肉、脂肪、神経細胞が存在するのでそれが腫瘍化し大きくなります。そのほとんどが良性であることが多いのですが、注意すべきものが2つあります。それが、カルチノイドと呼ばれる神経内分泌腫瘍とGISTと呼ばれるジストです。

ここでは、直腸カルチノイド(直腸NET)について説明していきます。

直腸カルチノイド(直腸NET)の原因は何?

直腸カルチノイドの正確な原因は不明ですが、以下の要素がリスクを高めることがあります。

遺伝的要因

家族に神経内分泌腫瘍がある場合、発症リスクが高くなることがあります。特に、MEN(多発性内分泌腺腫瘍)症候群のような遺伝性疾患が関連しています。副甲状腺や下垂体などにも腫瘍を合併しやすい多発性内分泌腫瘍症1型や、脳や脊髄、目の網膜、副腎髄質や腎臓などにも腫瘍を合併しやすいvon Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル・リンドウ)病などの疾患に好発することが知られています。

ホルモンの異常

神経内分泌細胞から分泌されるホルモンが異常に分泌されることが原因となる場合があります。直腸カルチノイド(直腸NET)は、直腸に発生する稀なタイプの腫瘍で、神経内分泌細胞から発生します。神経内分泌細胞は体内でホルモンを分泌する役割を持ち、カルチノイドはその細胞が異常増殖することによって発生します。

直腸カルチノイド(直腸NET)の症状は?

直腸カルチノイド(直腸NET)の多くは無症状であり、症状を出現させる(ホルモンを分泌している)機能性NETといわれるものは3〜4%に過ぎないとされています。機能性NETがホルモンを分泌することで何らかの症状が出現しているものを「カルチノイド症候群」と言います。こちらに関しては現在もカルチノイド症候群という呼び名のままで、NET症候群とは言いません。カルチノイド症候群であれば「セロトニン」を放出し皮膚紅潮、腹痛、下痢、動悸、喘息、心不全、皮疹などを認めることがあります。

大きい腫瘍になると潰瘍ができたり、血便がでたりすることもあります。

多くが無症状であることから、健康診断や人間ドックで行われる便潜血検査で「陽性」になった人が大腸カメラを受けることで見つかる場合が多いです。基本的には検査を受けない限りは見つからない病気です。

直腸カルチノイド(直腸NET)を診断するための検査とは?

直腸カルチノイド(直腸NET)の診断には、次のような検査が行われます。

大腸内視鏡検査

直腸カルチノイド(直腸NET)のほとんどは、定期検査や便潜血陽性になったときなどの際の大腸内視鏡検査で偶然発見されます。直腸に出現したカルチノイドであれば特徴的な形をしています。内視鏡(大腸カメラ)を使用して直接観察し、腫瘍の部位、大きさ、形などを確認した上で、組織検査のための生検を行います。脂質の含有量が多いため内視鏡で見ると、表面が正常な粘膜に覆われている黄白色調の粘膜下腫瘍として発見することが可能です。

直腸カルチノイド |たまプラーザ南口胃腸内科クリニック 消化器 ...

直腸カルチノイド(直腸NET)は粘膜の下に位置するため、粘膜表面からの生検では腫瘍組織が採取できない場合もあり、診断の確定になかなか至らない場合もあります。

超音波内視鏡検査(EUS)

粘膜の下に存在する腫瘍の特徴を観察することで、より正確な診断が可能になります。表面からの生検で組織が得られない時、腫瘍が大きい時、などは超音波内視鏡で腫瘍を確認しながら針を刺して細胞を採取する超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)という方法で組織検査を試みます。

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AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

病理組織診断

NETかどうかの診断に加えて、正確に悪性度分類を行うことで、治療方針を決定することになります。正確な診断・適切な治療方法の決定のためには、病理組織診断が必須です。

CT検査

X線を用いて身体の内部を描出する検査で、病変の大きさ、リンパ節腫大の有無、他臓器への転移の有無の検索を行います。造影剤を点滴しながら行うこともあります。

MRI検査

CT検査と似た検査ですが、X線ではなく磁力を用いて身体の内部を描出します。骨盤深部の病変の描出に優れています。

PET検査

がん細胞はブドウ糖の取り込みが高いことを利用して、遠隔転移を検出する検査です。CTで遠隔転移を検索しますが、診断に難渋する場合にもPETを用います。

直腸カルチノイドの治療とは?

直腸カルチノイド(直腸NET)の治療には、「内視鏡治療」「外科的治療」「集学的治療」があります。基本的に、安全に切除できると判断される場合は腫瘍を残らず切除することになります。

内視鏡的切除術

腫瘍サイズが1cm以下、深達度(深さ)が粘膜下層レベルにとどまる、形がいびつでないもの、という条件が揃うような腫瘍は転移率が低いとされています。超音波内視鏡検査やCTでリンパ節転移や遠隔転移がないと確認できた場合は、内視鏡治療を行います。切除した病変を確認し、腫瘍の遺残が疑われる場合は追加で手術を推奨することがあります。

外科的手術

腫瘍サイズが1cm以上、深達度(深さ)が粘膜下層より深いものに関しては、リンパ節への転移のリスクが高くなるため外科手術を行うことになります。手術では、腸管にできた腫瘍とともに、周囲のリンパ節をひと固まりとして切除します。腹腔鏡手術で行うことが大半ですが、腫瘍が大きい場合や他臓器合併切除が必要な場合は、開腹手術で行うことがあります。あくまでNET治療の原則は外科的切除となっています。

集学的治療

腫瘍が局所に留まらず、他臓器への転移がある場合は集学的治療を行います。病状にあわせて、ホルモン療法、抗がん剤療法、放射線療法などを組み合わせて治療します。抗がん剤療法は腫瘍の進行を抑える目的の治療と、症状を改善する治療に分けられます。

まとめ

直腸カルチノイド(直腸NET)は、直腸に好発する粘膜下腫瘍のなかのひとつで神経内分泌腫瘍です。30-60歳という幅広い年齢層に発生し、性別による違いはないと考えられています。多くの場合症状はなく、定期健診などの大腸内視鏡検査時に偶然見つかることが多いです。大きさが1cm未満の早期の状態であれば内視鏡での治療が可能な可能性が高いですが、大きいものや癌化した様な進行した状態の場合は外科的手術や集学的治療が必要となります。

定期的な健診やドックを受けること、便潜血検査で「陽性」となったら確実に大腸内視鏡検査を受けることが、直腸カルチノイド(直腸NET)を早期の段階で発見して、早期に内視鏡治療を受けるためには重要なことです。

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