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胃がんABCリスク検診って? ヘリコバクター・ピロリ菌の診断はどうするの?

  • 胃内視鏡検査

ピロリ菌について

ピロリ菌は1982年 にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されました。約3×0.5μmの大きさのらせん状をした細菌で、4~8本のしっぽがあります。このしっぽをヘリコプターのように回転させて移動し、胃の前庭部(pylorus)に生息することから、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。

ピロリ菌の培養成功

ウォレンとマーシャルはピロリ菌の発見だけではなく、ピロリ菌の培養に成功しています。この培養の成功により後に病気との関連性を発見することになります。実は、ピロリ菌の培養成功の裏には、ある失敗がありました。

通常、細菌の培養にはある程度の時間が経過したところで菌の数を確認し、増殖が成功しているかどうかを確認します。彼らは一般的な実験と同じ48時間を基準として実験を行っていましたが、なかなか増殖に成功しませんでした。

あるとき、彼らは培養実験を行っていることを忘れそのまま休暇に入ってしまったのです。5日後に、休暇から戻った彼らが培養器を確認したところ驚くべきことに培養が成功していたのです。その後の研究により、ピロリ菌の培養には4日間が必要だと判明しています。

慢性胃炎、胃潰瘍の原因ひとつ

ピロリ菌の発見以前はストレスや生活習慣が胃潰瘍の主な原因だと考えられていました。誰も日常的に起こる胃炎や胃潰瘍の原因が、細菌感染症だとは考えていなかったのです。研究者のほとんどが、胃粘膜のような酸性環境で生きられる細菌なんているはずがないという思い込みも存在していました。ウォレンとマーシャルによりピロリ菌が酸性環境で生きられるのは、ウレアーゼという酵素をつくりだしてアンモニアを産生し、胃酸を中和するからだとわかっています。

ノーベル賞受賞

ピロリ菌感染が病気の原因であることを証明する方法の一つは、正常な胃粘膜を持つ人がピロリ菌に感染した後に胃潰瘍になることでした。1984年に病気を検証するための実験は行われました。方法は単純で、「ボランティア」がピロリ菌培養液を飲み、5日後に膨満感や食欲低下、嘔吐(おうと)といった症状が出現し、内視鏡で重度の活動性胃炎を認めました。こうした胃炎や胃潰瘍におけるピロリ菌の役割を示した一連の研究により、マーシャルとウォレンは2005年にノーベル賞を受賞しました。ちなみに「男性ボランティア」はマーシャル本人であったのは驚くべきことです。

胃がんABCリスク検診について

2015年にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が、ピロリ菌の感染だけで保険適応になりました。それ以降、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が盛んにおこなわれるようになりましたが、そこには胃がんABCリスク検診の普及も関与しています。

自治体などが行っている胃がんABCリスク 検診とは、血液検査にてヘリコバクター・ピロリIgG 抗体検査(採血)でピロリ菌感染の有無を、ペプシノゲン(PG)検査(こちらも採血)で胃粘膜の炎症の程度を調べ、その結果を組み合わせて胃がんのリスクをA,B,C,Dの4群に分類して評価する検診です。A群は抗体陰性、PG法陰性で、ピロリ菌に感染していないので抗体が作られていない状態で、胃炎も起こっていない状況です。B群は抗体陽性、PG法陰性でピロリ菌の感染が成立し、体内でピロリ菌に対する抗体が作られている状況ですが、まだ胃炎の程度が軽度のためペプシノゲン法が陰性の状態です。C群は抗体陽性、PG法陽性でピロリ菌の感染が成立し、体内でピロリ菌に対する抗体が作られている状況で、なおかつ胃炎がかなり進行している状態となりペプシノゲン法が陽性になった状態です。D群は、抗体陰性、PG法陰性の状態です。この状態はピロリ菌の感染が成立し抗体が作られていたのですが、胃炎が胃の中で完成してしまった状態のため、胃の中でピロリ菌が住み着ける環境がなくなり自然消滅してしまい抗体産生が行われなくなった状態のため、抗体は陽性から陰性に変化してしまった状態で、ペプシノゲン法は胃炎が進行している状態のため陽性なのです。

ABCリスク検診の問題点

この分類法には様々な問題があります。血液中のピロリ抗体の基準値が使用する検査キットの精度により異なる点、胃炎をおこすのがピロリ菌だけではないことが挙げられます。現在も血液中のピロリ抗体の基準値に関しては検討されている最中です。検診などで大人数をさばく場合にはある程度有効かもしれませんが、胃の中を直接見ている訳ではありませんので、このABCリスク検診だけで胃がんの有無は分からないので、注意が必要です。検査管理指針が示されています、胃がんの早期発見のために1年に1回の胃カメラ検査をお勧めしています。A群だからと言って胃がんにならないということでは決してありません。

そして、ABCリスク検診を毎年受ける方が比較的多く見受けられますが、胃がんリスク検診は1度受けて、そのリスクが正しく判断されれば2回目以降は決して必要なものではありません。可能であれば胃カメラ検査を受けて、胃粘膜に萎縮性胃炎があるかどうかを必ず確認することが重要になります。

胃がんの発生原因はピロリ菌が感染しておこる萎縮性胃炎から発生することが多いですが、ピロリ菌陰性の胃からでも胃がんが発生することが近年の研究で警鐘されています。EBウイルスがその代表で、EBウイルスは若年期に誰もが感染するウイルス感染症です。悪性リンパ腫の原因の一つでもあり、EBウイルスによる胃がんの発生が増加しています。そして、ピロリ菌陰性でもごく稀にですが、スキルス胃がんのもとになると考えられている印環細胞がんが発生します。発見されるほとんどの方に症状はありません。定期的に行われている胃カメラ検査や、胃もたれ胃痛、胸やけといったいわゆる胃の症状で偶然胃カメラ検査を受けて、数ミリの早期胃がんが見つかったというラッキーなケースがほとんどなのです。

ピロリ菌の診断はどうするの?

ピロリ菌を診断する検査にはいくつか方法があります。大きくは、内視鏡検査を使う方法と、内視鏡検査を使わない方法に分けられます。

内視鏡を使う方法では、胃の中の様子を内視鏡で観察する時に、胃から生検で採取した胃の組織を用いることで行う、「迅速ウレアーゼ試験」、「鏡検法」、「培養法」があります。迅速ウレアーゼ試験は、

内視鏡を使わない方法には、「抗体測定(血液検査、尿検査)」、「尿素呼気試験」、「便中抗原測定」があります。

これらを単独もしくは組み合わせて検査をしていきます。個人によって最適な検査方法が異なりますので消化器内科専門医師にご相談ください。

尿素呼気試験とは?

ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解して、アンモニアと二酸化炭素を生成します。尿素の分解により、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排泄されます。この試験法は、この原理を利用して、検査薬(13C-尿素)を患者さんに服用して頂きます。ピロリ菌に感染している場合では、尿素が分解されるため呼気に13CO2が多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していない場合では、尿素が分解されないため13CO2の呼気排泄はほとんど起こりません。

抗体検査とは?

ヒトはピロリ菌に感染すると、免疫と呼ばれる機能を利用して抵抗力として菌に対するための抗体をつくります。血液検査で良く測定されるのはピロリ抗体が血液中にあるものを測定します。また、尿中にも排泄されるので、尿中に存在するピロリ抗体の有無を調べる方法もあります。検診で測定される場合の多くが、検診の時に血液検査が行われるので血中抗体ですが、家からおしっこを検査機関に郵送して検査をした場合には尿中抗体ということになります。この二つの診断精度には大きな差はありません。

糞便中抗原測定とは?

糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。胃から消化管を通って排泄物の中に混じっているピロリ菌そのものを測定します。この検査は、偽陰性といって採取する場所つまりピロリ菌がついていない便の部位を測定してしまうと、本来は陽性なのに陰性と判断されてしまうことがあります。

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が持っているウレアーゼという、尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。内視鏡で採取した胃粘膜を特殊な反応液に添加し、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。ピロリ菌が存在すれば、反応液が黄色から鮮やかな蛍光ピンク色に変化します。迅速ウレアーゼ試験も、採取した胃粘膜の部位にたまたまピロリ菌が存在しない場合には検査結果が陰性となりえるので、偽陰性のケースがあります。

組織鏡検法

内視鏡で採取した胃の粘膜の組織標本に、ギムザ染色という特殊な染色をしてピロリ菌を直接顕微鏡で探す組織診断方法です。以前は混入したごみと思われていた顕微鏡で見える微笑の物体が、特殊な染色により細菌であることがわかり実はそれがピロリ菌であったのです。組織検鏡法も採取した胃粘膜の部位にたまたまピロリ菌が存在しない場合には検査結果が陰性となりえるので、偽陰性のケースがあります。

培養法

内視鏡で採取した胃の粘膜をすりつぶし、それをピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して判定します。前途したウォレンとマーシャルが確立した培養方法です。培養法も採取した胃粘膜の部位にたまたまピロリ菌が存在しない場合や、うまくピロリ菌培養されていない場合は検査結果が陰性となりえるので、偽陰性のケースがあります。

ピロリ菌除菌の保険適応は?

ピロリ菌検査の保険適用は胃内視鏡検査によって「ピロリ菌感染胃炎(萎縮性胃炎)・胃潰瘍・十二指腸潰瘍」が確認された場合と「早期胃がんの内視鏡治療後・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少症」となっています。胃内視鏡検査を行わずに、ピロリ菌のみの検査を行うことはできませんし、早期胃がんの有無や胃炎の状態を評価せずにピロリ菌検索のみを行うのはナンセンスな行為です。健診施設や、消化器病専門医以外の医療機関でピロリ菌除菌のみされたケースが今でもあります。今、胃の中に胃がんがあるかどうかを必ず確認し、またピロリ菌の現在の感染があるかどうかを上記の検査で確認したうえで、ピロリ菌の1次除菌治療を行うことが必要です。保険診療内では1次除菌が失敗した方を対象にした2次除菌まで認められています。また、除菌の際に使用する抗生剤の中にペニシリンがあります。ペニシリンアレルギーをお持ちの方は、保険診療でのピロリ菌除菌ができないと想定されます。この場合は、ペニシリンを含まない抗生剤を選択する必要がありますので、自費診療で行われる3次除菌と呼ばれる治療薬の組み合わせを用いることを考慮します。

最後に

今回はピロリ菌の発見に関わったウォレンとマーシャルについて、ピロリ菌の培養、疾患へのかかわりについて説明しました。そして、胃がんABCリスク検診の説明、注意点、ピロリ菌の具体的な診断方法にも触れてみました。ピロリ菌についてわからないこと、自分が感染しているかどうかを自分で判断するのは危険です。ピロリ菌の感染と胃がんとの関連性は強いので、心配な方は一度消化器病専門医のいる医療機関を受診し、胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

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